人間が生きてゆくための食料という恵みを自然界から得るためにも、現在の自然環境や生態系を維持していくことはとても重要です。
もし一部の生物種が少なくなったり、いなくなったりすると、その生物が担当していた役割が自然から消滅することになります。結果として、その生物と生命連鎖の関係にあった生物群もいなくなり、自然環境の維持というリレー競技が中断されることになるのです。
室見川流域は、これまでも私のレポートでご紹介してきたとおり、豊かな種の多様性を有していますが、一種の生物がいなくなることで川の生態系のバランスが崩れ、それが種の減少をもたらし、環境を取り戻すことの出来ないレベルにまで変化させてしまいます。
従って、私達市民のひとりひとりが、室見川域に生息する生命に深い興味を示し、日常的な観察の中で、変化の兆しに鋭敏になるとともに、環境にとって悪しき変化をくい止める策を講じないと、豊かな室見川の自然を守り次の世代に遺すことが出来ません。 |
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室見川河口域は、福岡市でも有数のアサリ貝の生息地として、多くの市民が潮干狩りを楽しむレジャースポットとなっています。
例年春先から夏にかけて、たくさんのこども連れの家族が潮干狩りに訪れ、アサリ貝の発見に驚嘆の声を上げている様を見ると、私は母なる室見川に対して「ありがとう」という言葉を投げ掛けずにはいられなくなります。
そして、この潮干狩りの風物詩が永遠のものであることを願うのですが、他方で「待てよ。アサリ貝は永遠に室見川河口域に生き続けるのかな。」という疑念が頭をもたげるのです。
アサリ貝は極めて移動範囲の狭い(10cmから最大200mと言われる。)海底生活を送っています。それ故アサリ貝にとっては生まれた地の環境の質が唯一生命を支える条件になっているのです。
幸いにも近年の室見川は、行政当局や流域住民の皆さまの努力で、BOD値や全窒素値、全燐値など、水質に与える負荷が減少傾向にあることや、河口の澪(ミオ)にも恵まれ、干潟の地盤が低く、それでいて泥を被らない場所という条件も重なり、アサリ貝繁殖の適地となっています。
しかし他方、上・中流域の開発等の影響で少しづつ泥が流れ込み、河口部の泥分率が上昇しているのではないかと懸念する人が多くなっていることも確かです。
もしそうであれば、アサリ貝にとってゆゆしき事態なのです。何故なら、アサリ貝は砂の多い底質でしか生存できず、泥の割合が30%を超えると、生存がおぼつかなくなると言われているのです。
私はこの事実を検証するために、今後は市当局にも相談して、上・中流域の開発や工事に関する監視を強めてゆきたいと考えています。 |

もう一点私たちが考え、行動しなければならない課題があります。それはアサリ貝の生態を考えた潮干狩りのルールをつくり、それを実行に移す時ではないかということです。
アサリ貝の寿命は約8年といわれ、4年目には約4・5cmクラスの大型貝となります。
このクラスの貝を獲ることは問題ありませんが、余りに小さな貝まで獲ってしまうことや母貝の保護を無視した乱獲は、種の保存上好ましくありません。
出来れば、成長貝全体の2割〜3割くらいは、新しい種をつくる産卵用母貝として残すという、人間ならではの優しさを持ちたいものです。
また、場合によっては年毎に母貝保護区を設定し、そこを一年間禁漁区にするという賢明なルールづくり(輪採法といいます。)が求められます。
そうすることによって、アサリ貝との永遠の共生関係を築き、潮干狩りという欠けがえのない楽しみを後生に伝えることができるのではないでしょうか。
室見川河口のアサリ貝漁場は、県下の他の漁場と違い専門家である漁民の方々の管理下にありません。従って、潮干狩りをこの地で楽しむ市民の方々自らが、いつまでも潮干狩りを楽しめる工夫、即ちアサリ貝の永久的種の保存に取り組まれることを課せられているといっても過言ではないと思います。
「環境にやさしい都市をめざす福岡市民の宣言」のなかに、次のような一節があることを改めてここにお示しし、レポートの筆を置きたいと思います。
『私たちは、小さな努力を積み重ね、たがいに協力し、生きものと共に住める緑豊かな都市(まち)づくりに参加します。』
(ふくおか環境元年宣言より) |
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■博多湾のアサリ貝の生息地
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■河川の水質の状況
| 水系名 |
河川名 |
調査地点 |
BOD75%値 |
全窒素 |
全燐 |
| S59〜61年度 |
H6〜8年度 |
S59〜61年度 |
H6〜8年度 |
S59〜61年度 |
H6〜8年度 |
| 室見川 |
室見川 |
室見橋 |
3.0 |
2.0 |
0.73 |
0.60 |
0.084 |
0.059 |
| 室見川 |
金屑川 |
飛石橋 |
10 |
2.4 |
4.8 |
1.0 |
0.55 |
0.11 |
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注)BOD(生物科学的酸素要求量 Biochemical Oxygen Demand)
バクテリアが一定時間内(通常は、20℃で5日間)に水中の有機物を酸化し、分解して浄化するのに消費される酸素の量を mg/lであらわした数量。必要酸素量が多いということは、水中の有機物が多いことを意味し、汚染度が高いといえる。 |